第38回小山田記念賞
受賞技術「新型マルチリンクサスペンションにおけるアルミニウム材料適用開発」
受賞者
高木 潔 君 日産自動車株式会社
今野善裕 君 日産自動車株式会社
松本健一 君 日産自動車株式会社
竹岡典弘 君 日産自動車株式会社
表彰理由
現在の乗用車には、居住性,走行性の更なる改善と、年毎に厳しくなる環境負荷低減への対策が必要不可欠である。そのような背景の中、受賞候補者らは、従来 アルミニウム合金では量産車への適用が困難とされていたマルチリンク式サスペンションの構成部品の開発と実用化に成功した。アルミニウム合金を採用した部 品名と工法、合金種は下記の通りである。
1. フロントサスペンション (1) アッパーリンク(6000系鍛造品) (2) コンプレッションロッド (6000系鍛造品) (3) トランスバースリンク (6000系鍛造品) (4) ナックルアーム (スクイズダイカスト)
2. リアサスペンション (1) サスペンションメンバー(押出しパイプ+ハイドロフォーム,板プレス曲げ、他) (2) ロアリンク・リア(Al-Si-Mg系開発合金+高真空ダイカスト) (3) ロアリンク・フロント(6000系押出し品) (4) ラデイアスロッド(6000系押出し材) (5) A アーム (6000系鍛造品)
乗用車部品のアルミ化に関しては、是までにも幾つかの事例が紹介されているが、本技術のように、量産車を対象に多様なアルミニウム合金,工法を取り入れて 実用化された事例は国内で初めてである。特筆すべき技術としては、リアサスペンション部品の①サスペンションメンバーの製法と、②ロアリンクフロントの材 料と工法である。 前者は設計,工法の最適化によって現時点では世界最軽量となっており,現行の鉄板プレス品に比べ約30%の軽量化を達成している。 後者は高延性のダイカスト合金を開発すると共に同社が開発した高真空ダイカスト技術との組み合わせにより、従来はアルミ化は困難とされていた本部品の実用化に成功し、現行鉄部品に比べて23%の軽量化を達成している。 ‘01~’02年に掛けての実績で、セダン、スポーツカーを含めた4車種以上に採用され、国内生産分だけで25,000台/年以上、車一台あたり約40 kgのアルミニウムの新規需要を開拓した。今後の新規車種にも横展開が予定されており、本技術の軽金属技術の発展に寄与するところ大であり、アルミニウム 産業への貢献度も極めて大きいと言える。