エッセイ
私と英語と国際交流
平成27年2月10日掲載
川﨑 健太郎
香川高等専門学校
専攻科
はじめに,第127回秋期大会におきまして優秀ポスター発表賞をいただき,大変嬉しく思います.私は,まだまだ未熟者ではありますが,この大会を通して皆様から頂いたアドバイスをこれからの研究に活かしていきたいです。
さて,エッセイ執筆のお話を頂き,喜んで筆を執った次第ではありますが,どうかしばらくお付き合いください。私は現在,香川高等専門学校 専攻科に所属しております。高等専門学校といいますと,高校生と大学生の学部二年間を一貫して学べる5年制を採用した工学系の専門学校です。なかでも専攻科は,卒業後にさらに2年間を高専にて勉学に励もうとする学生に向けた課程で,大学学部の3,4年に相当します。
この専攻科に所属する私ですが,専攻科生は本科生(高校生と大学2年間に所属する学生)と違って国際交流が活発に行われております。今回の話題は,今年の11月19日から21日まで3日間にかけて行われた,ISTS2014(International Symposium on Technology for Sustainability 2014)についての私の体験記です。
ISTS2014は独立行政法人 国立高等専門学校機構,国立台北科技大学,長岡技術科学大学および豊橋技術科学大学の共催で開催され,今年で4回目となる国際会議です。様々な国の工学技術系の大学が集まり,学生だけでなく諸先生方もターゲットとした高専の国際交流の一大イベントのひとつです。これに参加するには,参加登録はもちろん必要ですが,4ページほどの論文を提出して査読に通さなければなりません。もちろん論文は「英語」で書くことが必要です。「英語」,それは私にとって魔物も同然の存在です.何を隠そう私は,英語から逃げるために高専へ入学したと言っても過言ではなかったからです。
しかし,私も二十歳になり,専攻科に進学し,ひしひしと英語の必要性がわかってきたところであり,工学系の技術は,今やグローバルな面で勝負していかなければならない,このように思えてなりませんでした。そこで,私は「これは,苦手を克服する絶好の機会ではないのか?」と,考えを転換してみました。すると,少しわくわくしてくるのです。もし,この査読に通れば私は台北に行くことができる,そんな期待をこめて,一生懸命英語論文を仕上げた結果,acceptのメールが事務局から送られてきました。私は心の中で,4回程度ガッツポーズを決めていました。勢いづいて,その日のうちに発表原稿をほとんど完成させていたので,よっぽど嬉しかったのだと思います。発表原稿自体は,それまでに様々な学会で発表していましたので,それほど苦ではありませんでした。
そして,またまた新しい挑戦が私のところに舞い込んできました。私にとって学会などで様々な地方を訪れることはありますが,あくまですべて国内のお話です。国内の宿泊施設,交通網,所用時間など,調べる方法や予約の方法は分かっていました。しかし,今回は国外の宿泊施設や,そこまで到達するための交通手段を個人で手配したことがありません。嫌だな,大変だなと心の中で思っていましたが,やはり考え方を変えることからはじめました.「これは,将来のための布石だ.」と,プラス思考に考えると,自ずとやらなければいけないことが見えてきました。まずは,調べる,聞くといった研究と同じようなことから始めてみよう。私は旅行会社に行き,最終的には予約も全部取れたため,またひとつ成長したなと思いました。
そして,とうとうこの日がやって来ました,11月20日(ISTS 2日目),私の発表日です。私は,セッション3の最後の発表でした。当然,来場している学生,先生方は国立台北科技大学や日本からきた方たちです。発表方式は,オーラルです。英語を喋らなければなりません。それまでに,度重なる練習の末,幾分か形にはなっておりました。ただ,私は緊張という大きなファクターを忘れていました。壇上に立って,座長の方から始めてくださいの合図があり,タイトルコールから入った時です。頭が真っ白になって,何を言えばいいのかすっかり抜けてしまいました。しかし,練習が功を奏したのか口が勝手に動いてくれるのです。頭の中は真っ白なのになぜか言わなければいけないことをしっかりと言葉にすることができる,これが練習の力なのかと思いました.そして,発表は無事終了しましたが,残念なことに,座長の方からの質問に答えることができませんでした。理由として,座長さんの話している英語が私には聞き取れなかったところにあります。これは,書く英語は時間をかけてじっくりやればできるけれども,聞いて話すという英語はその場ですぐに答えを出さなければならない,よい教訓になりました。私は,とにかく相手の話していることをきっちりと聞き取ることのできる能力がほしいと思いました。これは私にとって海外という新天地から得た大きな宝物でした。
そして,帰国後,私はリスニング能力をまずは上げようと思い勉強をはじめました。そして,英語論文もすらすら読みたいという願いも合わさって,リーディングにも着手しています。
最後になりますが,何事も恐れず,チャレンジすることで新しい何かが見えることが国際交流から得た一番の実りです。この国際交流で英語の重要性を改めて理解し,さらに,私自身の課題も得ることができました。次もこのような機会があれば,全力で挑みたいと思います。
追伸:台北101の展望台から見た台湾の夜景です.道路が一筋の光のように伸びていて幻想的です。