一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

特別な1日

平成26年1月1日掲載

河合 晃弘

富山大学工学部材料機能工学科

 

 この度、初めて参加した軽金属学会で、また学部生でありながら優秀ポスター発表賞を頂き大変嬉しく、光栄に思います。私のポスター発表を聴いてくださった皆様方から、貴重な質問やアドバイスを頂きました。今回の貴重な質問やアドバイスを無駄にしないように今後の実験・研究に役立てていき、日々精進していきたいと思っています。

 ポスターには、473K時効したAl-Mg-Ge合金における時効析出組織のTEM観察というテーマで発表させて頂きました。私が、金属に興味を持ったのは大学3年生の専門実験の透過型電子顕微鏡を用いたAl合金の組織観察とAl合金を用いた時効硬化試験を行ったときです。透過型電子顕微鏡を用いてAl合金中の組織を観察し、合金中に析出物と呼ばれるものが存在することまた、Al合金に熱処理を施すことで硬さが変化していく様子はとても不思議に感じ、もっと詳しく知りたいと思いました。そして私は、組織制御工学講座の松田研究室に所属しました。現在私はAl-Mg-Ge合金に時効処理を施し、透過型電子顕微鏡を用いて時効組織を研究しています。Al-Mg-Ge合金を選んだ理由は、配属当初テーマを決めるときにこのAl-Mg-Ge合金はまだ実用化されておらず、未知の部分が多く、そしてAl-Mg-Ge合金を研究しているのは富山大学、組織制御工学講座の松田研究室とノルウェーのグループの2グループのみであると聴きました。私は、研究しているグループが少なく未開拓な部分が多いということに惹かれてこのAl-Mg-Ge合金の研究を始めました。実験を始めてからは、研究室の先輩方に懇切丁寧に試料の作製方法といった実験のさまざまな事を教えて頂きました。しかし、いざ一人で透過型電子顕微鏡用の試料を作製しても透過電子顕微鏡で観察することが出来ないほど試料が厚くなかなか良い試料を作製する事が出来ませんでした。その間、先輩に相談してアドバイスを頂きまた、自分で試料厚さ、電解研磨中の電圧、研磨液の温度、そして電解研磨後の洗浄を工夫した結果良い試料を作製出来るようになりました。しかし良い試料を作製できるまでに実験を始めてから約数カ月かかりました。出来た薄膜試料を透過型電子顕微鏡で観察し、亜時効側、最高硬さ時、過時効側で時効時間の経過に伴って析出物の大きさや析出物のタイプが変化することを知り、私はとても面白いなと感じました。また、なぜ時効処理を行う事で時効時間ごとに析出物のタイプが変化するのだろうと疑問を持ちました。さらに実験を進めると過時効側の薄膜試料から過剰Si型Al-Mg-Si合金で見られるA型析出物に類似した粗大な析出物が観察されました。この度のポスター発表においてA型析出物が析出する事に関して、母相中がGe過剰になっているためにA型析出物が析出するということをMgとGeの組成比に注目して説明させて頂きました。ポスター発表を振り返ると、始まる前は自分のポスター発表を聴いて下さるかどうか不安でいっぱいでした。しかし、発表時間になると多くの皆様方が自分のポスター発表を最後まで聴いて下さり、多くの貴重な質問やアドバイスを頂きました。また、聴いて下さった方から「面白い」や「お互い研究頑張りましょう」といった言葉を頂き、これからの研究によりやる気が湧いてきました。初めて参加した軽金属学会のポスター発表は私にとって特別な1日となりました。

 話は変わりますが、私は走る事が好きで、大学3年生まで約10年間陸上競技をしておりました。練習を重ねることでタイムは上がり、自己ベストを更新する瞬間はとても興奮しこれまで以上にないくらいの達成感を味わう事が出来ます。また、陸上競技は自分との戦いだと私は思っています。少しでも自分に負けて練習を疎かにしてしまうとタイムは落ちてしまうシビアなスポーツです。何を言いたいのかと言いますと、研究も陸上競技に近いと感じた事です。実験で薄膜試料を上手く作れるようになったと思って数日間疎かにすると、感が鈍り試料作りが下手になってしまいます。毎日コツコツと地道にやっていく事で実験の成功に繋がると強く思います。そして自己ベストを出した時のように研究において達成感を味わえるように日々実験・研究をしていきたいと思います。

 最後になりましたが、優秀ポスター発表賞を頂く事が出来たのも日々ご指導を頂いている松田先生、北陸職業能力開発大学校の池野先生、松田研究室の皆様方そして、日頃経済面で支えて頂き、応援してくれる私の家族に深く感謝致します。
 松田研究室連絡先:ikenolab【あっとまーく】@eng.u-toyama.ac.jp

 
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