エッセイ
ビール嫌いからビール好きへ
平成20年7月1日掲載
柴田 顕弘
東北大学大学院環境科学研究科丸山研究室
博士課程後期2年
エッセイ執筆のお願いを受けたものの、具体的にどのような話題が適しているのか、初めてエッセイを書いてみる私にとって、大きな問題でした。参考にしようとこれまで執筆されたエッセイを読み返してみると、日常生活を話題にしているものが見受けられました。それならば、研究室に配属されて以来付き合う回数が増えたお酒について、まだお酒を飲み始めて10年も経っていない若輩者が体験談と今後の目標を語ってみたいと思います。
お酒と聞いて、真っ先に思い浮かべるものは何でしょうか? ビール、日本酒、焼酎、カクテル、ワインなどなど、様々なお酒が存在しています。私が初めてお酒を口にしたのは、20歳になったときにサークルでの飲み会のときでした。よく「まずはビール」と耳にしますが、甘党である私はビールの苦味が受け入れられず、まったく飲めなかったのです。周りの人が「のど越しがいい」と話しているのを聞いて、なるほどビールは味じゃなくてのど越しか、などと思ったりもしましたが、やはり苦いのはだめでした。私みたいな人がいるかどうか分かりませんが、こんなときはチューハイやカクテルの存在に助けられたものです。しかし、飲み会の「とりあえずビールで乾杯」が日本人の習慣なのか、必ずと言っていいほど始めはビールがでてきます。幸いなことに、本研究室では私が甘党で苦いビールがだめだと知っている方ばかりなので、最初のビールだけでも飲んで慣れていこうと勘弁してもらっていました。
そんな日が4年ほど経ち、ビール嫌いな私にビール好きになる決定的な転機が訪れました。仙台市内あるビールのおいしいと噂のお店に行く機会があったのです。基本的にお酒自体は好きなので、よほどのことがない限り飲み会には参加していましたが、このときはビール以外に何かあるかなと、お店のウリを完全無視する結構失礼な思考をしていました。研究室の面々が、何種類もの工場直送のビールを早く飲ませろと言わんばかりにピッチャーで注文している横で、私はビールから逃れるために周りを見渡していました。そこでふと気がついたのです、これはそのお店のビールは何か違うと。今まで色々なお店でピッチャーやジョッキの注がれたビールを見てきたのですが、このお店のビールはやけに綺麗に見えたのです。実際に自分のジョッキに注がれたビールを乾杯の合図とともにグビッっと飲んでみると、まったくの素人である私でも今まで飲んできたものと違うと実感しました。泡がまるでクリームのようにきめ細かく、あれほど嫌だった苦味がまったく気にならなかったのです。あまりの美味しさに、グラスを空けてすかさずお代りを頼んでしまいました。途中からの記憶が曖昧なのですが、ひたすらビールを飲んでいたような気がします。ビールの美味さをウリにしているお店なのだから、美味いのは当然だろうと思われるかもしれませんが、この美味しいビールとの出会いはまさに衝撃的でした。お酒の席で記憶が曖昧になるほど飲んだのは、飲み過ぎた感が否めませんが、私はすっかりこのビールが気に入ってしまい、ビール嫌いからビール好きへ一歩近づきました。
ビールをとりあえずではありますが飲めるようになった私の次の目標は、日本酒の甘口と辛口の区別がつくようになることです。今までの飲み会でさんざん飲んできたのですが、実は飲みやすいかそうでないかの区別くらいしかつかなかったりします。お酒はノミュニケーションの大事な相棒、楽しく付き合えるようにもっとお酒に強くなりたいなと思う次第です。
このような稚拙な文章をではありますが、ビール好きな方には「そうだろう、ビールは美味いのだ!」と、ビールが苦手な方には「ビールって苦手だけど、飲んでみようかな」と思っていただければ幸いです。
最後に、軽金属とはまったく関係ない内容となってしまいましたが、エッセイを書く機会を与えていただいた軽金属学会関係者各位に心から感謝いたします。