エッセイ
優秀ポスター発表賞を受賞して
平成19年7月4日掲載
鹿川 隆廣
茨城大学大学院
理工学研究科
博士前期過程 機械工学専攻
2年次
この度、第112回軽金属学会春期大会のポスターセッションにて、多くの優れた研究発表の中から優秀ポスター発表賞をいただけたことは、大変光栄に感じると同時に、自分の中では予想していなかったことでしたので、本当に自分が頂いてよいのかという戸惑いの気持ちもありました。ですが、賞を頂けたことを励みに、さらに一層、自身の研究に邁進していかなければと感じております。
今回、「アルミニウム合金中の水素の挙動に及ぼす晶出第二相の影響」という題目で発表させていただきました。ここで内容について簡単に紹介させていただきます。近年、水素燃料電池自動車用の水素タンクのライナー材に高強度アルミニウム合金の利用が検討されています。しかし、この代表的な高強度アルミニウム合金の7075合金は湿潤大気下の低ひずみ速度法(SSRT)引張試験において水素脆化を起こすことが近年の研究で報告されています。その原因の一つとして、試料表面の第二相粒子の影響が大きいと考えられています。そこで本研究では、この7075合金の表面に薄い純アルミニウムをクラッドすることにより第二相を覆い隠すことで脆化を防ぐことが出来るのではないかと考えました。この純アルミニウムを被覆した試料を実際に作製し、湿潤大気環境下でのSSRT試験後の破面の違いをSEMにより観察しました。その結果、被覆の効果を明らかにすることが出来ました。
この寄稿に際しまして、掲載期間が第113回秋季大会への準備期間であることもあり、恐縮ではありますが自分が考えるポスターセッションにおけるポイントを述べたいと思います。まず、ポスターの内容をシンプルにすることが第一だと思います。セッションでは、研究の内容を短時間で説明するほうが聞き手側も質疑しやすいと思います。そのため、通常の口頭発表に比べ、話す内容、資料(ポスター)がより明解であることが重要です。その際、ポスターをシンプルにしてしまうことにより削除されるものは、試料の実物や手持ち資料をクリアファイルを用いて整理しておくなど、当日の発表をイメージして準備をしておくと本番でもスムーズに発表できると思います。また今回、「3分間スピーチ」と題された発表内容説明が導入されました。直接、審査に関わらないとのことでしたが、3分間という短時間で自身の研究の要点を大勢の方に短時間でわかりやすく説明するという、今までのポスターセッションにはなかった要素が、口頭発表に近い形で求められることを意識しておく必要もあると思います。
最後になりましたが、優秀ポスター発表賞をいただくにあたり、日頃から丁寧なご指導を賜っております、伊藤吾朗先生をはじめ、実験に協力していただいている研究室のメンバーに、この場を借りて感謝の意を示したいと思います。