エッセイ
歩く健康法
平成17年11月30日掲載
金谷 輝人
岡山理科大学工学部
機械システム工学科
教授
私が意識して歩くことを開始したのは、言い換えれば歩行が健康維持に必要なことではないかと気が付いた3年半前の春である。そのころ次男が遠方の大学へ入学し、妻と二人だけの生活が始まった。それまでは、早くどこかの大学へ入ってくれないかと心配ばかりしていたのだが、いざ出て行くと急に寂しくなり、胃腸の調子までひどく悪くなってしまった。掛かり付けの医院で診てもらうと、「胃炎のようだが大丈夫ですよ。あなたのような職業なら、胃が少々痛くなるのは当たり前でしょう。」と言われた。以前、「こう見えても気が弱いんですよ。よく胃がキリキリするんです。」と立派な体格の後輩の助手(現在は、活躍中の教授)が言ったことを思い出し、(悩みの内容は少々違うがこの歳になってやっと人並みかあーと?)少し恥ずかしくもあり、また妙に安心もした。しかし、お医者さんは、「コレステロール値が少々高いですねー。太りすぎです。とりあえず食事に気を付けて、よく運動なさい。それで駄目なら薬を増やしますよー。」と、少々怖そうな顔で注意された。その瞬間、日頃元気そのものに見えていたのに、急に倒れられた先輩達の顔が目に浮かび、人事でないことを実感した。
この日の夕方から、さっそく散歩を開始した。同時に、“歩いて痩せるのは無理である”と聞いたことを思い出し、食事の量をかなり減らしてみた。この時期のある週末、スーパーまで買い物に出かけた時のことである。あまりの空腹に耐えかねて、店の外に出るや否や買ったばかりのバナナを一本むさぼり食ってしまった。それでもこの状態を2ヶ月余り続けた結果、約8kgの減量に成功した。丁度その頃、健康診断があり、いろんな数値が明らかに改善されていた。知人からは、「おや、ずいぶんスマートになったねー。」とか、「顔の辺りがすっきりしてきて、いい感じですよ。」等と言われ、「そうですかー。それ程ではないですよ。」と答えつつ、これはしめしめとほくそ笑んだものである。この状態を持続できたら良かったのであるが、世の中そうそう都合よくは行かない。落とし穴が待ち受けていた。夏の暑さと食欲の秋、忘年会に正月料理、仕上げは冬の寒さと風邪対策の鍋料理である。一応、その都度の減量と長時間の歩行は繰り返したのであるが? 結局、1年後には体重が7kg増え、正直なものでコレステロール値等もほぼ元に戻っていた。その後も歩行・減食と体重減少そしてその逆プロセスの繰り返しの日々が続いた。この続きを書き出すと何スクロールにも及びそうなので、このあたりで終わりにしたい。つまるところ、“一気に減量しようとして、無理な歩行や過度の減食をすることは続かない(私には、無理)。日々、コツコツと継続できることをなすべきである。”という、考えてみれば至極あたり前のことであった。なお、歩行と健康については、ネット検索で“ウオーキング”をクイックすれば、実に様々な知識が得られる。
よく晴れた秋の日に歩行中の吉備路にて
私の歩行習慣は継続中であり、今のところまあまあ健康そうに思える。
よく晴れた秋の日に歩行中の吉備路にて