マグネシウムの歴史
6.マグネシウムの将来
これまで、航空・宇宙材料としてマグネシウムが広く使用されるように世界のマグネシウム業界は努力を重ねてきましたが、使用期間の短い軍事用機器での利用はあっても、民間機への応用は広がっておりません。1986年に米国で開かれた宇宙空間への挑戦という副題での国際会議の中心話題は、耐食性の向上、耐熱性を考慮した高強度合金の開発、安全性の3点のようでした。おそらく、現在のマグネシウム工業会に対しても同様な要請があるものと思います。たしかに、マグネシウム工業は高純度金属の使用、表面処理の改良などによってかなり腐食の問題を克服してきました。また、強度の問題も新合金の開発で対応してきており、現在もその努力がなされていますが、まだ、それらの技術が業界の実力として十分に発揮されているとは思われません。業界外部から高い信頼性をもって見られるようになってはじめてマグネシウムの将来があると思います。最後に、20年ほど前の記事ですが、現時点でも通用する話としてP.T.Foley*の講演内容を要約して次に記載しました。
構造材料としてのマグネシウム – 夢は果たして実現するか
この講演では、マグネシウムの需要の返還を欧州、北米、日本、南米の各地域に分けて解説し、1980年代の高純度耐食合金(AZ91DおよびE)および高靭性合金(AM20およびAM50)の開発、鋳造技術の進歩、新生産計画の発表による地金供給量の確保の見通しなどによって市場への突破口が開けたとしています。