軽金属のお話

マグネシウムの歴史

5.1 輸送機器

(3)その他の輸送機器

単車・自転車:単車(オートバイ、二輪車)に対するマグネシウム合金の応用は、前述のように、世界的には1920年代からなされており、その後ハブホイール、クランクケースカバー、エンジンハウジングなどに用いられました。わが国ではホンダが1956年にマグネシウム砂型鋳物製のハブドラムおよびブレーキを採用し、後にダイカスト品のカバー類を用いましたが、コストなどの関係から使用量が減少しました。それ以後、世界的にも一般の二輪車でのマグネシウム合金部品の採用は必ずしも順調に推移してきませんでした。しかし、競技用二輪車におけるマグネシウム部品の採用は重要な課題として引き継がれ、1975年頃には欧州で競技者の250CCオールマグネシウムエンジンが紹介されています。最近は、車両の軽量化の中で、車両やその他の部品への応用に関心がもたれてきています。
自転車についても同様で、かつて、フレーム構造にマグネシウム合金管材を用いて試作した経験がありますが、合成やコストなどの面で実用化が広がりませんでした。最近、接合構造などによる施策が行われたり、軽量化を活用したユニークな設計がなされたりしています。また、リクレーション用四輪自動車、41時間4分22秒の連続走行記録を作った風防付人力三輪車、上皇の容易ないわゆるバリアフリーのサイドビームフレーム型自転車なども作られています。

手押し車(Sack truck、sack barrow):人力による荷物の運搬具の一つに手押し車がありますが、その形態にはいろいろあってマグネシウム合金製のものとしては1950年ころに単輪式のものや四輪の家庭用キャリヤーが紹介されていましたが、その後、欧米ではAZ31B合金展伸材を主材とし、AZ91C合金砂型鋳物などを組み合わせた二輪式のものが普及しました。わが国でも試作されたり、輸入販売されたりしましたが、コストなどの点で普及しませんでした。しかし、この機器は依然としてマグネシウムの優れた応用の一つです。

踏み板(tread、duckboard)、傾斜路台(ramp):この分類に入るものとしては、掛け橋式の踏み板や車両での荷物の上げ下ろしに人または運搬機器の通り道としての役目の傾斜路式など、大小各型のものがあり、材料は主にAZ31B合金圧延厚板です。いずれにしろ、運搬・移動が可能なものであるから、軽量なことが大きなメリットとなります。

その他の輸送機器:以上の他、輸送機器としては古くからローラーコンベア、ベビースケートローラ(ベビーカー)、運搬用一輪車、スノーモービル(雪上車)、各種キャリア、ケーブルカー、パン置棚(キャスター付)、運送寝台車、エレベータバスケット、エスカレータ、戦車の車輪(鍛造品)、船舶用コンテナ、レジャーボートなどの軽量化を志向して台座、車輪および各種カバー類、内装材などへマグネシウム合金の利用が試みられ、かなり実用されたものもあります。次は産業機器について述べます。