軽金属のお話

マグネシウムの歴史

5.2 産業機器等

(1)電気・電子機器

 1930年代後半、無線通信機工業においてラジオ用品、移動用放送機器用の筐体など数点の部品に、また、電気工業でモーターのケース、軸受けおよびその台など数点にマグネシウム合金が使用されており、1960年代には野戦通信用携帯電話など3点の通信機器の軽量化のため、またその後民需でもパソコン、携帯電話など多くの通信および放送関係機器の筐体など20点余の部品および電池類にマグネシウム合金が用いられています。

(2)光学機器

 1930年代後半に軽量性と寸法安定性との利を活用して双眼鏡および望遠鏡の鏡体、腕およびコーン、カメラ、引伸ばし器、幻灯機等の枠などにマグネシウム合金を用いていました。そのような機器として今日まで次のようなものがあります。すなわち、望遠鏡筒および部品、双眼鏡筒および部品、望遠鏡筒および部品、望遠鏡用三脚台、顕微鏡筒および部品、カメラ胴体・ケース、映画撮影・映写機、テレビカメラフレーム、ビデオカメラフレーム、ミニデスクおよびウォークマンのハウジング、テレビおよびビデオのモニターフレーム、投影機、引伸し器、地図製作用大型カメラの真空板などであります。また、特殊なものとして、1967年に宇宙衛星の太陽発電用に12個の断片よりなる20フィート直径のAZ31B合金焼きなまし材製集光鏡が米国NASAで作られました。

(3)加工機械・工具および工作用

 これらの分野では、軽量化による省エネルギー、良好な切削性、寸法安定性などの特性を活かしてマグネシウム合金を使用しています。1929年にはすでに集塵機の薄肉ケースなど4点。それ以後、固定機械の運動部、工作機械、印刷機械、その他の機械器具の部品および治具など50点以上が主としてマグネシウムダイカスト合金で作られていました。

(4)農林機械・用具

 農業用トラクターのローテープユニット、軽トラクターのプラットホーム、携帯用自動鋸(チェーンソー)、草刈り機、まぐさ刈り機、造園用器具、梯子、フォーク、シャベル、農機具、熊手(レーキ)、農薬散布機等にマグネシウム部品が用いられています。

(5)建築・土木機械および用具

 建築および土木作業における機械の部品、治具、補助用具など30点以上の材料としてマグネシウム合金が用いられています。また、特殊なものとして海底に敷設するガスパイプラインの接合個所をマグネシウム押出し材マットで包んで保護して海底に沈め、マットは3~4週間で海水中に溶かしてしまう、という用途があります。これらのうち、コンクリート関係の器具にとって、マグネシウムは軽量ということばかりでなく、アルカリに対する耐食性にすぐれているという点があります。

(6)その他

 各種医科歯科・医療機器部品、各種ブラケット、車椅子、義足、病院ベッドキャリア・ハウジング、メガネフレーム、多目的シェルターのフレーム、冷房装置、舞台装置、美術装飾、楽器(1961年にスペインギターのネック(棹部)の芯金としてマグネシウム押出材を使用)、プリンタ部分などにマグネシウム合金が利用されました。その他、特殊なものとしてジム(潜水具)、サボ(砲弾殻補填材)などがあります。